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Pachinko in Shimokitazawa

AUTHOR

Kanon KUBO

都市において、パチンコ店はしばしば娯楽施設として位置づけられ、明るい照明と大音量の音響に満ちた開かれた空間として都市の表層に現れる。しかし、その内部には、資本主義社会がもたらす構造的な格差や孤立が沈殿しており、外部からは捉えにくい複雑な社会状況を孕んでいる。ここにこそ、都市の深層に潜む「見えないスラム」との結びつきが存在する。まず、パチンコ店は、ルフェーブルが論じた「交換価値が都市空間を支配する構造」を最も端的に示す場所の一つである。店舗の設計やレイアウト、光、音、機械の動作など、あらゆる要素が利用者の時間、感情、注意を資本へと転換する装置として働いている。つまり、空間そのものが資本の循環を促す機械であり、そこでは人間の生活や身体が、交換価値を生み出すための手段へと従属している。都市の中に均質に配置され、どの街にも同質的なパチンコ店が現れるのは、交換価値によって空間が抽象化された結果である。しかし、ここで重要なのは、この極めて資本主義的な空間の内部に、別の使用価値が同時に生まれている点である。表面的には交換価値を生み出す装置として成立しているにもかかわらず、来店者の多くが求めているのは、単なる「賭博行為」だけではない。孤独を抱える高齢者、家庭や職場に居場所を見いだせない人、時間を過ごす手段を持たない人などが、パチンコ店に通うことを日常のリズムとしている。彼らにとってそこは、匿名性が確保され、他者との接触を最小限に抑えながら滞在できる「居場所」である。すなわち、交換価値に従属した空間の内部で、利用者は独自の使用価値を再構築している。このように、パチンコ店は、都市の中で「構造的排除と文化的包摂」が同時に作用する空間となる。一見すると誰もが入ることのできる開かれた空間であり、階層的な差異は可視化されない。店内では年齢や所得の異なる人々が混在し、匿名的な均質性が成立している。しかし、この均質性こそが、それぞれの社会的背景や格差を不可視化する力を持っている。利用者は、生活基盤、所得、家族関係、居住環境といった現実の格差を抱えながらも、空間の中では同じ「消費者」として一列に並ぶ。ここで格差は消滅したのではなく、空間的に露呈しない状態へと移行したにすぎない。これがまさに「見えないスラム」と呼びうる状況である。したがって、パチンコ店は単なる娯楽施設ではなく、交換価値が支配する都市の構造と、そこに残存する使用価値が生み出す人間的な営みとが複雑に交差する空間である。表面的な平等性が格差の深層を覆い隠し、匿名性が孤立を増幅させるという逆説的な構造によって、パチンコ店は都市における「見えないスラム」の一形態となっている。そこには、資本の論理によって形成されながらも、その内部に人間の生活の断片がかすかに立ち現れる、二重化した都市の姿が現れているのである。

MAIL:muraji@meiji.ac.jp

214-8571 
A1107, 1-1-1 Higashi-Mita, Tama, Kawasaki, Kanagawa
Meiji University School of Science and Technology

〒214-8571
神奈川県川崎市多摩区東三田1-1-1
明治大学理工学部建築学科
第二校舎A館11F  A1107 

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