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Arcade In Ikebukuro

AUTHOR

Yuuka Koizumi

都市的匿名性を成立させる併設型店舗の空間構造
adores!池袋を対象とする意義は、都市において希少になった「匿名性が保障された非制度的居場所」を典型的に示していた点にある。池袋は巨大ターミナルであり、都市的混在を自然に生む立地条件を備えるが、それだけでは匿名的空間は成立しない。ここで決定的な役割を果たしていたのが、併設型店舗としての空間構造そのものである。併設型ゲームセンターは、大規模フロアに多ジャンルの筐体が密集配置されるため、視線が多方向に散らされ、個人への注視が弱まる。また、通路幅は広く、島状の筐体配置が連続するため、利用者の動きが分散し、滞留密度が均一になりやすい。これが「他者と交わるが干渉しすぎない距離」をつくり出す。さらに、音響環境が常に高い一定レベルにあることで、会話や行動が背景ノイズに埋もれ、属性が露出しにくくなる。adores!池袋のフロアは、音ゲー・格ゲー・レトロ・クレーンなど異なる文化圏が並列的に並び、それぞれの“行動様式”が空間的に尊重されていた。結果として、青少年から高齢者、常連とビギナー、社会
的所属の異なる人々が互いを過度に意識せず共存できる匿名性が成立し、都市の中の「脱所属的な居場所=invisible slum」として機能していた。

併設型店舗の歴史と制度的背景 ― 混在と匿名性を支える社会的フレーム
併設型店舗の起源は1931年の百貨店屋上遊園地に遡り、その後、映画館・ホテル・旅館・ドライブインなどの付属機能として全国へ広がった。つまり、このビルディングタイプ自体が「他の機能と併存しながら多様な客層を受け入れる」歴史を持っており、混在性は構造的特徴だけでなく、発生の文脈からも内包されている。

1980年代には風営法が適用され、賭博性の高い機器に規制がかかったものの、ゲームセンターは“賭博場”ではなく“遊戯施設”として区分され続けたため、青少年の出入りは完全に制限されなかった。各自治体は補助的に条例・指導要綱を設けたが、規制の中心は機器の種類であり、利用者属性の管理ではなかった。この制度的構造が、ゲームセンターに「過度に管理されない自由な滞在」を許してきた。さらに、店舗ごとのハウスルールは必要最低限にとどまり、adores!池袋では時間規制や年齢制限が緩やかに運用されていた。これにより、制度的枠組みの外側にある自由度が担保され、都市の規範から一時的に身を離せる脱所属的空間が維持されていた。しかし、adores!池袋は来春閉店する。これにより、都市における匿名性・混在・脱所属を支えてきた「非制度的居場所」は失われる。これは、都市文化において軽視されがちなゲームセンターの社会的・空間的価値を問い直す象徴的事例と言える。

MAIL:muraji@meiji.ac.jp

214-8571 
A1107, 1-1-1 Higashi-Mita, Tama, Kawasaki, Kanagawa
Meiji University School of Science and Technology

〒214-8571
神奈川県川崎市多摩区東三田1-1-1
明治大学理工学部建築学科
第二校舎A館11F  A1107 

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